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来て、私の手助けをしなさい! 天国・地獄の体験

救世軍の創立者ウィリアム・ブース(1829年〜1912年。イギリス)の見た幻

(マイケル・H・イーガー著地獄の恐怖・天国の壮麗より抜粋)

ウィリアム・ブース

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大海原の中の巨大な岩

 暗い嵐の大海原が見えました。その上に、黒い雲が重く掛かっていました。それらの雲の間から、時折、明るい稲光がひらめき、大きなの音がとどろき、風がうめくように吹き、波が生じて泡を立てていました。
 その大海原の中に、無数のかわいそうな人々が見え、水の中に入っては浮かび上がり、叫んだり、悲鳴を上げたり、呪いのことばを吐いたり、もがいたり、おぼれたりしていました。彼らは水から上って来ても、再び金切り声を上げていました。そして、沈んでから、もう上って来ない人たちもいました。
 この暗くて怒れる大海原の中から、一つの巨大な岩が立ち上るのが見えました。その岩は、その嵐の海の上に掛かっている黒雲の上にまで高くそびえ立ちました。
 この大きな岩のふもとの周囲のいたるところに、広大なプラットホーム(檀)が見えました。
 もがいたり、おぼれたりしていた、あのかわいそうで哀れな大ぜいの人が、その怒れる大海原からこの檀の上へ続々とよじ登ろうとしているのが見え、私はうれしくなりました。
 また、その檀の上ですでに助かっている少数の人々が、まだその怒れる海の中にいるかわいそうな人たちを助けて、安全な場所に引き上げようとしているのが見えました。
 私がもっとよく見ると、救出された大ぜいの人々が、はしご、ロープ、ポートやさまざまな手段で、もがいているそのかわいそうな人々を海の中から救い出そうと熱心に働いているのがわかりました。
 「滅びようとしている人たちを救う」という情熱をもって、結果を気にすることなく、実際に海の中に飛び込んだ人たちも、あちらこちらにいました。
 よく見ると、その檀には、さまざまな人々が入り交じっているのがわかりました。つまり、彼らはさまざまな階層に分けられており、それぞれ異なる娯楽や職業に専心していました。
 しかし、海から人々を救う働きをしているのは、彼らのうちのほんの少数の人だけのようでした。

忘却と無関心

 ところで、私が最も当惑したのは、彼らはみな何らかの時にその大海原から救出されていたのに、ほとんどすべての人がそのことを全く忘れてしまっているように見えたことです。
 どういうわけか、あの暗闇と危険についての記憶は、もはや彼らを少しも悩ませてはいないようでした。
 そして、私にとってそれと同じくらいに不思議であり当惑したのは、この人たちが、彼らのまさに目の前でもがき、おぼれている、あの滅びようとしているかわいそうな人々のことを、何も気に掛けてなく、必死に努力するような何の心遣いもしていないようであったことでした。
 彼らの多くは、彼ら自身の夫や妻たちであり、兄弟や姉妹たちであり、彼ら自身の子どもたちでもありました。
 今やこの驚くべき無関心は、無知や知識の欠如の結果ではあり得ませんでした。なぜなら、彼らはまさにそこにいて、その光景をすべて見ており、そのことを話題にしたことさえあったからです。
 おぼれつつあるそのかわいそうな人々の恐ろしい状態を説明する講義や説教を、いつも聞いていた人々も多くいました。
 この檀にいた人々は、さまざまな仕事や娯楽に没頭していました。
 利益を得て蓄えをしようと、商売やビジネスに昼も夜も専念している人たちもいました。
 その岩の側面の場所で花を育てている人々、絵を書いている人々、音楽を演奏している人々、あるいは、さまざまなスタイルの服を着て、称賛されるべく歩いている人々など、彼らはそうして楽しんで自分たちの時間を過ごしていました。飲食ばかりしている人たちもおり、すでに救出された人々のことで論争に熱中している人たちもいました。
 しかし、私が最も驚いたのは、神が呼びかけられた壇上の人々のことでした。
 彼らはキリストの御声を聞いており、自分はそれに従うべきだと感じていました(少なくとも彼らは、自分は従っていると主張していました)。彼らはキリストをとても愛していると告白していました。
 彼らは、キリストが始められたその働きについて彼に心から共鳴していました。彼らはキリストを礼拝していました。その働きをしますと公言した人々もいました。
 私が最も驚いたのは、そういう彼らが、自分たちの商売や職業自分たちのお金の貯蓄や娯楽自分たちの家族やグループ、自分たちの宗教や、そのことについての論争、自分たちが本土(天国)に行くための準備などに、あまりにも熱中していて、キリストから彼らに届いた叫びには耳を傾けなかったことでした。
 どういうわけか、彼らはそれを聞いても、それに注意を払わなかったのです。彼らは気に掛けなかったのです。
 こうして、彼らの真ん前にいる大ぜいの人々は、暗闇の中でもがき続け、悲鳴を上げ続け、おぼれ続けていました。

キリストからの呼びかけ・人々からの叫び

 それから私は、この不思議な幻の中でこれより前に起こったどんなことより、はるかに奇妙なことを見ました。
 キリストは、壇上の人々のうちのある人たちに呼びかけておられ、彼らが来て、その滅びようとしている人々を救うという彼の困難な仕事の手助けをすることを願っておられました。
 ところが、彼らはいつも、キリストが自分たちのところに来てくださるようにと祈って叫んでいたのです!
 ある人たちは、キリストに自分たちのところに来てもらって、その方の時間と力を、自分たちをもっと幸せにすることに費やしてもらうことを願っていました。
 ある人たちは、彼に来てもらって、その方が自分たちに書き送ってくださった手紙の真理に関して、自分たちが抱いているさまざまな疑問や疑念を取り除いてもらうことを願っていました。
 ある人たちは、彼に来てもらって、自分たちがその岩の上でもっと安心を感じさせてもらうことを願っていました。つまり、自分がその大海原に二度と滑り落ちることはないと確信するようになるまで安心させてもらうことをです。
 ほかの大ぜいの人々は、いつか自分がその岩を離れて確実に本土(天国)に行くようになることを自分に確信させてもらうことを願っていました。というのも、実際、不注意な歩みをして再びあの嵐の海の中に落ちてしまった人たちもいたからです。
 こうして、この人々はその岩のできるだけ高い場所に上って会合し、本土のほうを見つめて(キリストはそこにおられる、と彼らは思っていました)、こう叫んでいました。

 「私たちのところに来てください! 来て、私たちを助けてください!

 ところが、その間ずっと、キリストは(彼の御霊によって)、あの怒れる海の深みの中でもがいて、おぼれているかわいそうな人々の中に下っておられ、彼らにご自分の両腕をかけて海から彼らを引き出そうとしておられました。
 そしてキリストは上を見上げて岩の上にいる人たちをご覧になり、ご自分の声をからして彼らに叫ばれ、こう呼びかけておられました。

 私のところに来なさい! 来て、私の手助けをしなさい!

 彼は強く願っておられましたが、無駄でした。

解き明かし

 その時、私はすべてが理解できました。とても明解でした。
 そのは、人生という大海原であり、現実の、本当の人間存在という海でした。
 あの稲光は、神の御座から来る真理のきらめきでした。
 あのは、遠くでこだまする神の御怒りでした。
 あの嵐の海の中で悲鳴を上げ、もがき、苦悩している人々の群れは、何百万人もの、かわいそうな罪人たちでした。
 ああ、それは何と暗い海だったことでしょう!
 また、そこには何と大ぜいの裕福な人や貧しい人、無知な人や教育を受けた人たちがいたことでしょう。
 人々は、それぞれの環境や状況の点では、みなちがっていましたが、一つの点では共通していました。すなわち、神の御前で、みな罪人であることです。みな、何らかの不義に捕らえられ、また、それにしがみつき、何らかの偶像に夢中になっており、何らかの悪魔的情欲の奴隷であり、悪魔に支配されていたことです!
「みなが共通しているのは一つの点だけですか?」
 いいえ、みな二つの点で共通しています。
 彼らが邪悪であるという点で同じであるだけでなく、救い出されなければ、下へ、下へ、下へと沈んで、沈んで行き、同じ恐ろしい滅びに至るのです。
 あの巨大な避難所としてのは、カルバリを表していました。すなわち、イエス様が彼らのために死なれた場所です。そして、その岩の上にいる人々は、救い出された人々でした。
 彼らが自分のエネルギーや賜物や時間を使ったその使い方は、「私は罪と地獄から救われて主なるイエス・キリストに付き従っている者です」と公言する人々のさまざまな職業や娯楽を表していました。
 あの一握りの、きっぱりと決意していた人々、すなわち、自分の命を犠牲にしてでも、滅びようとしている人たちを救おうとしていた人々は、イエス様の十字架の真の戦士たちでした。
 あの怒れる海のただ中から彼らに呼びかけておられた方は、神の御子でした。
 すなわち、「きのうも、きょうも、いつまでも同じ」方です。
 彼は、私たちの周りにいる、あの死にゆく大群衆を、この恐ろしい滅びから救うために奮闘し、とりなしておられるのです。
 そして、その方の御声は、生活のざわめきの上から聞こえており、救われた人々に対し、「来なさい、世の人々を救うのを手伝いなさい!」と呼びかけておられるのです。

キリストは、あなたに呼びかけておられる!

 キリストにある愛するみなさん、あなたは、あの海から救出されています。
 あなたは今、あの岩の上にいるのです。
 キリストは、あの暗い海の中におられて、「来て、私の手助けをしなさい!」とあなたに呼びかけておられるのです。
 あなたは行きますか?
 あなた自身に目を向けてください。滅びようとしている大群衆で満ちた、大波を立てているあの海は、あなたが今立っている所にまで波を押し寄せているのです。

 さて、この幻とは別に、私は一つの事実をお話しします。それは聖書と同じくリアルであり、十字架に掛かられたキリストと同じくリアルであり、裁きの日と同じくリアルであり、また、その後に続く天国と地獄と同じくリアルな事実です。
 しっかり見てください! 外見に惑わされないでください。人間も物事も、本当は、目に見える姿とはちがうものなのです。
 あの岩の上にいない人々は、みな、あの海の中にいるのです! 
 あの大きな白い御座の視点から彼らを見てください、みなさんは何という光景を目にすることでしょう!
 神の御子であられるイエス・キリストは、彼の御霊を通して、この死のうとしている群衆のただ中で、彼らを救おうと奮闘しておられるのです。
 そして彼は、あなたに、その海の中に飛び込むようにとあなたに呼びかけておられるのです。
 すなわち、ただちに彼のかたわらに行って、彼の聖なる闘いの手助けをするように、と呼びかけておられるのです。
 あなたは飛び込みますか? あなたは彼の足下に行き、彼の御思いのままにあなた自身を完全に献げますか?

あなたは、これから何をしますか?

 ある時、一人の若いクリスチャンが私のところに来て、こう言いました。彼女は、しばらくの間は、自分の仕事も、祈りも、お金も、主に献げていましたが、今度は自分の命を主に献げたいと思うようになりました。
 彼女はあの戦いにすぐに入って行きたかったのです。つまり、彼女はあの海で主の手助けをしに行きたかったのです。
 ちょうど、あの岸にいる一人の男性が、海の中でもがいている人を見て、自分の上着を脱ぎ、助け出そうと飛び込むのと同じように、あなたも、そうしてはいかがでしょうか? 
 あなたは、滅びようとしているあのかわいそうなたましいたちのことを考えたり、賛美して祈ったりしながら、まだあの岸の上でぐすぐずしています。
 あなたは、あなたのを捨て、あなたのプライドを捨て、ほかの人たちの意見のことでの思いわずらいを捨て、安楽さへのあなたの愛着を捨て、とても長い間あなたを引き留めてきた利己心をすべて捨て、そして、死にゆくこの大ぜいの男女の救出へと駆けつけるでしょうか?
 あの大きな波を立てている海は暗くて危険であるように見えますか?
 もちろん、そうです。そこに飛び込むことが、あなたにとっても、それを行っているすべての人と同様に、困難と冷笑と苦しみを意味することには、何の疑念もありません。
 あなたにとって、それは、それ以上のものを意味するかもしれません。それは死を意味するかもしれません。
 しかし、あの海からあなたを手招きしておられる方は、それが何を意味することになるか、ご存知です。そして、それをご存知でありながら、彼はそれでもなお、あなたに呼びかけておられ、あなたに来なさいと命じておられるのです。
 あなたはそれをしなければなりません! あなたは、それをしないでおくことはできません。
 あなたはすでに十分長い間、キリスト教を享受してきました。あなたは、すでにこれまで数々の楽しいことを経験し、楽しい歌、楽しい集会などを経験してきました。人間としてのたくさんの幸せも、手をたたいたり、叫んで賛美したりすることも、たくさんありました。地上の天国もたくさんありました。
 今度は、神のもとに行って、彼に告げてください、
私は、そういうすべてのものに私の背を向けるまでに準備ができています。
 これから私は、自分に残された日々を、あの滅びようとしている大ぜいの人々のただ中で闘うことに、喜んで費やすことにします、どんな犠牲を払ってでも、そうします
」と。
 あなたはそれをしなければなりません。今やあなたの思いの上に、あの光が差し込んでいるはずです。
 また、今やあなたの耳に、あの呼びかけ(召し)が鳴り響いているはずです。
 また、今やあなたの目の前には、手招きしておられるあの御手があるはずです。
 あなたには他の選択の余地は何もありません。
 滅びようとしているあの群衆の中へ降りて行くことは、あなたの義務なのです。
 今からは、あなたの幸せは、彼らの悲惨さに共感することの中にあり、
あなたの安らぎは、彼らの痛みに共感することの中にあり、
あなたの冠は、彼らが自分の十字架を負うのを助けてあげることの中にあり、
あなたの天国は、行って、地獄が開けている口から彼らを救出することの中にあるのです。

 あなたはこれから何をしますか?
ウィリアム・ブース  

(マイケル・H・イーガー著『地獄の恐怖・天国の壮麗』より抜粋)


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